フルバック通信
- フルバック通信 第164号(2022/06/10)
- 3.三重から発信 ~方言~
皆様、ごきげんよう。平岡です。
さて、今回は三重の方言ネタを一つ。
その方言というのは「とごる」です。
三重県の方言というと、なにかにつけて やんやん 言っているイメージがあるかもしれませんが、「とごる」は実に見事な方言です。
なんせ、三重県人の多くが「とごる」を方言だとは知らず、全国共通で通じる言葉だと信じているくらいです。(私調べ)
かくいう私も、数年前に気付くまでは方言だなどとは微塵も思っていませんでした。
この話を読んで、「え!? 方言やったん!? とごるって他では通じやんの!?」ってびっくりしている三重県人がいそうですが、残念ながら実はそうなんです。国語辞典にも載っていません…。
(三重県とその周辺のある程度の地域では通じると思いますが)
さて、ではこの「とごる」とはどういう意味なのかといいますと、なかなかイメージを伝えるのが難しいのですが、語弊を恐れずにいうなら「液体中に何かが溶け残り、底に沈んだ状態」です。
例えばペットボトルのお茶で、抹茶入りのやつを思い浮かべてください。
ペットボトルを長期間動かさずに置いておくと、抹茶の粉が底の方に「とごって」いるのを見たことがあると思います。
オレンジジュースなども長期間保存していると、底の方に粉のようなものが「とごって」いるのを見ます。
他にも、これからの季節、アイスコーヒーをお飲みになる方も多いと思いますが、アイスコーヒーにガムシロップを入れた時、よく混ぜないと底の方にもやもやと陽炎のようにガムシロップが「とごって」しまいます。
さて、こんな感じでなんとなく「とごっている」状態をご理解していただけたでしょうか?
抹茶などの例では「とごって」いるのは粉(個体)ですが、ガムシロップのように「とごって」いる対象が液体の場合もあるわけです。
三重県ではこういった状況において、「それ、よく混ぜやんととごっとるよ」とか「あ、ガムシロとごっとる」みたいな感じで日常的に使います。
さて、三重県にお住まいでない皆様は、この「とごっている」状態のことをなんと表現しているのでしょうか?
理化学的に「沈殿」とか「沈積」でしょうか?
「とごる」をあえて言い換えるなら、沈殿はいい線いっていると思いますが、日常会話ではあまり使わないですよね。
「溜まる」ではないか?
うーん…それも意味としてはわかるのですが、「とごる」とイコールかというと、なんかちょっとニュアンスが違う気持ち悪さがあります。
三重県の人なら、この気持ち悪さがわかってもらえるでしょうか…?。
三重県人でない方々も、何かが沈殿している状態を「溜まっている」とは言わない気がするのですが、どうですか?
そんなわけで、「とごる」は、三重県人の感覚からすると他の言葉に言い換えるのがちょっと難しいのです。
しかも「とごる」は、言い得て妙というか、まさにあの状態のことを見事に言い表していると感じるのです。
皆さんの地元には「とごる」に代わる別の方言があったりするのでしょうか。
それとも「溜まる」などの(三重県人にとってはピンとこない)表現を使っているのでしょうか?
個人的には、もう面倒くさいので、いっそ「とごる」を共通語として全国でも使ったらいいと思っています。
三重県にお住まいでない皆様も「とごる」を使ってみてください。
そのうち日本中で通じる言葉になる日を夢見て。(平岡)
(抹茶の粉末がとごっている)